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慢性期の脳卒中患者に対するミラーセラピー(MT)の効果は?

慢性期の脳卒中患者に対するミラーセラピー(MT)の効果は?

皆さんはミラーセラピーという言葉をご存じでしょうか?
リハビリの勉強をしている人であれば一度は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどのような介入を行うのかをイメージできますか?

ミラーセラピー(MT:Mirror Therapy)とは、脳卒中の片麻痺患者に対する上肢機能へのアプローチ方法の一つで、従来のリハビリテーションアプローチと併用して行うことで効果を発揮することが知られています。
また、ミラーセラピーは環境があればセラピスト無しでも実施可能であるため在宅での活用が注目されており、慢性期での効果も多く報告されています。

そこで今回は、ミラーセラピーが慢性期の片麻痺患者に対してどのような効果をもたらすのかを様々な文献の内容をふまえてまとめていきたいと思います。

目次
  1. ①ミラーセラピーとは?
  2. ②ミラーセラピーは上肢機能の改善に効果的!
  3. ③ミラーセラピーは日常生活動作(ADL)の改善にも有効なのか!?
  4. ④ミラーセラピーは慢性期の介入にも有効か?
  5. ⑤まとめ
  6. ⑥参考文献

①ミラーセラピーとは?

ミラーセラピーとはその名の通り、ミラーボックスという箱の中に立てられた鏡に非麻痺側上肢の動きを映し、その動きを見て麻痺側上肢の筋運動感覚を生じさせる訓練です(①)。

元々はRamachandranらによって上肢切断患者の幻肢痛の治療法として報告されており、その後はAltschulerらによって脳卒中片麻痺患者に応用されその有効性が報告されました。

ミラーセラピーの効果については、経頭蓋磁気刺激を用いた先行研究によると視覚刺激や体性感覚刺激を外的に入力し運動錯覚を誘発することで、大脳皮質運動関連領域の興奮性を高めることができる可能性が報告されています(②)。

このように、ミラーセラピーは鏡によって麻痺した上肢を動くと脳に錯覚させることで、麻痺肢の不使用を防止する効果があります。



麻痺側の使用頻度を増加させることは、脳卒中の機能改善を図る上で重要なポイントの一つとされています。

そこで次の章では、ミラーセラピーを用いることで上肢の機能に対してどのように効果があるのかをまとめていきたいと思います。

②ミラーセラピーは上肢機能の改善に効果的!

Eun Kyu Jiらの研究(③)では、慢性期脳卒中患者に対してミラーセラピーを実施し、従来の介入群と上肢機能の改善について比較しています。その結果、Manual function test(MFT )、Fugl-Meyer評価(FMA)、およびModified Barthel Index(MBI)の有意な改善を示したことを報告しています。
また、平上ら(①)は、従来リハビリテーションのみの介入群に加えてミラーセラピーを追加で実施する群の方が、Brunnstrom Stage(Brs)の手指>FMAの手指>FMAの手関節>WMFT>FMAの肩・肘・前腕>Brsの上肢項目の順で効果量が大きかったことを報告しています。この結果から、上肢近位部の機能と比較して手指の巧緻性に関する評価の方が効果量が多いことが分かります。

これらの結果からも、ミラーセラピーでは上肢機能の改善に関与しており、中でも手指の機能改善により効果が高いことが示されています。



上肢や手指の動きは食事や更衣、セルフケア等の日常生活動作にも欠かせない機能であることは皆さんもご存じの通りであると思います。
慢性期の脳卒中では、上肢機能を必要とする生活動作の獲得は必須といってもいいくらいに重要です。

そこで次の章では、ミラーセラピーが日常生活動作にも効果をもたらすのかどうかを見ていきましょう。

③ミラーセラピーは日常生活動作(ADL)の改善にも有効なのか!?

上肢機能改善に効果があるといわれているミラーセラピーですが、実はADL改善に関しては、まだ一定した見解が得られていません。

実際にADLを評価する実際に用いられるFunctional Independence Measure(FIM)をアウトカムとしてADLに対する効果を調べた研究はいくつか存在しており、Yavuzerらは 、FIMのセルフケア項目において、MT群が対照群に比べ得点変化量が有意に大きかったと報告しています(③)。

一方で、Dohle らは FIM の運動項目(認知項目を除く)を用い、群間差はなかったと報告しています。(③)

ADLに関しては動作の自立度で評価する方法が多く、細かい上肢機能や手指の巧緻性が点数に反映されにくいという可能性が考えられますが、論文によって見解に差があることから今後のさらなる研究が期待される部分ではあります。

生活に直結する慢性期においてADLとの関連性が気になるところではありますが、そもそもミラーセラピーを実施するにあたっては、どのような環境が必要となるのでしょうか?

次の章で見ていきましょう。

④ミラーセラピーは慢性期の介入にも有効か?

ミラーセラピーは冒頭でも述べた通り、環境設定とプログラム指導を行うことで自宅での実施が可能なことから、個別での積極的なリハビリテーション介入が可能な急性期や回復期に関わらず、慢性期の脳卒中患者様に対しても幅広く活用することができることが示されています。

さらにHolm Thiemeらのレビュー(⑤)によると、ミラーセラピーの有害事象について21件の研究がなされていましたが、有害事象の報告はありませんでした。

慢性期でのリハビリは、介入頻度や個別介入の時間が限られているという現状があります。
そのため、MTを自宅での自主トレーニングとして提案し、セラピストの介入以外での時間で麻痺側の使用頻度が増えることが、機能回復に近づく可能性が考えられるのではないでしょうか。

⑤まとめ


今回は麻痺側上肢に対するミラーセラピーについてまとめていきました。
ミラーセラピーの効果については、①上肢機能の改善、②ADLの改善に効果があることが明らかになりました。
また、今回触れた効果以外にも疼痛の軽減や視空間認知の改善にも寄与する可能性があることが言われています。

特に機能回復が平坦になりやすい慢性期の脳卒中患者への介入については悩みの種になることが多いかと思いますが、そのような方に少しでも参考になれば幸いです。

最後まで御覧いただき、ありがとうございました!


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⑥参考文献


①平上尚吾, 井上優ら:脳卒中片麻痺患者の上肢運動機能に対する回復期のミラーセラピーの効果─麻痺側手指伸展の随意運動の有無によるサブグループ解析─, 理学療法科学31(4) 2016:609–613.
②Eun Kyu Ji, Hae Hyun Wang et al:Graded motor imagery training as a home exercise program for upper limb motor function in patients with chronic stroke. Medicine(Baltimore) 2021 ; 100(3): e24351.
②野嶌一平:視覚入力刺激を用いた運動学習の脳内機構, 理学療法学 41(8) 2014:540 ー543.
③平上尚吾, 井上優ら:脳卒中片麻痺患者の手指運動機能障害に対するミラーセラピーの効果, 理学療法学39(5) 2012:330一337.
④Holm Thieme, Nadine Morkisch et a:Mirror therapy for improving motor function after stroke,Cochrane Database Syst Rev. 2018; 7: CD008449.
⑤Ho-Suk Choi, Won-Seob Shin et al:Mirror Therapy Using Gesture Recognition for Upper Limb Function, Neck Discomfort, and Quality of Life After Chronic Stroke: A Single-Blind Randomized Controlled Trial. Med Sci Monit 2019; 25: 3271–3278.
⑥Wan-wen Liao, Wei-chi Chiang et al:Timing-dependent effects of transcranial direct current stimulation with mirror therapy on daily function and motor control in chronic stroke: a randomized controlled pilot study. J Neuroeng Rehabil 2020; 17: 101.

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